大手サイトで「天体望遠鏡」と検索すると表示されるベストセラー望遠鏡がどうにも気になるので調べてみました。月に300本以上売れているようです。しかし一見した限り、どうみても天体観測に使えるとは思えません。詳しく分析してみましょう、本当に天体観測に使える望遠鏡なのでしょうか?かなり偏った個人的見解の記事になっています。
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月間販売本数300本のヒット望遠鏡で天体観測はできるのか?
光学的にはアクロマート屈折望遠鏡です。望遠鏡で月間販売本数が300本はかなりの物でしょう。
天体望遠鏡と紹介されてるので天体観測に使う目的で購入する商品としての案内になっています。
ブランド CHIZEHO
型式 CT12
口径 70ミリ 焦点距離 400ミリ
接眼レンズ 20ミリ(20倍)、12ミリ(33倍)、6ミリ(66倍)
バローレンズ 5倍【最大倍率330倍】
天頂ミラー【45度】
ムーングラス
三脚【収納袋付き】カメラ三脚のように伸縮できます。
スマートフォン用アダプター
光学ファインダー付属
付属品が充実しています。購入してすぐに観測できる仕様になっています。
重量も2.17キロとコンパクトでいつでも持ち出して使える望遠鏡です。
天体観測には不向きな望遠鏡!おすすめできません!
商品紹介では天体観測用になっています。月のクレーターや土星の環が見えると明記されています。
さらに高倍率の333倍という数字が表示されています。この倍率で観測できるのでしょうか?
ブラックフライデー価格は9999円税込みです。さらに500円OFFのクーポンがつきます。通常は15999円税込みになっています。
結論としては対象を拡大することはできるのでしょうが天体観測に使用するのであればおすすめできません。
この記事は天体観測にはなぜ不向きなのかをまとめてみました。
レビューの評価点は高いのですが、読んでみると日本語のものは不自然で意味不明なものが多く参考にするべきではないようです
レンズについて
口径:70ミリ 焦点距離:400ミリ F値:5.7
レンズの大きさは望遠鏡にとって非常に重要です。口径が大きくなると集光力が向上して暗い天体を観測できます。
さらに分解能と呼ばれる細かいものを見分ける能力もあがります。
屈折式で70ミリは決して小さい口径ではありません。本来であれば土星の環はらくらく見えても良い口径になります。
一般的に初心者用の入門機としては60~80ミリの屈折望遠鏡が主力サイズです。うまい選択ではないでしょうか。
屈折式としてはF5.7でかなり小さくしています。焦点距離を短くすると全長も短くできるのでこの選択は問題ないと思います。
しかしF値が小さいとアクロマートでは色収差の影響が大きくなりシャープな見え味は難しくなります。
月のクレーターは見えると思いますが土星の環については厳しいと思います。
視野の周辺部での像のゆがみも大きくなります。視野内で観測できる範囲が中心部に限られます。
色収差は最初はそれほど気にならないかもしれませんが気づきだすと、とても気になるやっかいな存在です。とくに月の周辺や木星、土星などの輝星にははっきりと出てきます。暗い星やDSO(銀河、星雲、星団)はそれほど気になりません。
倍率設定
倍率が固定されている双眼鏡とは違って接眼レンズを差し替えることによって倍率の変更ができます。
接眼レンズは3種類用意されています。20ミリ。12ミリ、6ミリです。
6ミリの接眼レンズでも66倍なのでそれほど無茶な倍率構成ではありません。月面のクレーターは認識できると思います。
月面のデコボコは20倍でも認識できるので66倍であればそれなりにクレーターの観測はできます。
5倍バローレンズは販促用と考えましょう
しかし5倍バローレンズは使い方に相当の熟練と忍耐が必要でしょう。ピントを合わせることができるのか不安です。
口径70ミリの上限倍率は140倍になります。333倍はいくら何でもやり過ぎの感じがします。
高倍率を売り物にした販売戦略からでた選択なのでしょうが倍率を高くしても詳しく見えるものではありません。
ただ大きくなるだけです。シャープな像は大きくすれば見やすくなることがありますが、甘い像はボケも一緒に拡大するため余計に見にくくなります。
倍率は大きくなればなるほどピント合わせがシビアになります。気持ちの良いスッキリした見え方にするためには望遠鏡の光学精度と接眼部の精密な構造が必要です。この望遠鏡にそこまでの精度はありません。あくまでも低倍率で使用できる構造です。
架台の剛性について【高倍率で使える構造とは思えない】
付属の三脚はみるからに貧弱そうでとても高倍率で観測できるとは思えません。
100倍以上の高倍率で観測するときは風や振動にくわえて操作時の揺れを素早く吸収する必要があります。
高倍率では視野内の天体が日周運動で大きく動き、揺れが収まるまで待っている間に目標天体が中心からずれてしまいます。
微動装置がないので高倍率で観測するのは現実的ではない!
案内ページの動画をみても気持ちよいぐらいにガタついています。20倍で使用するのであれば使えると思いますが高倍率では役に立たないでしょう。
DSO(銀河、星雲、星団)は20倍でも楽しめます。あまり三脚を伸ばさないようにして振動を抑える工夫をして低倍率での観測に使うことをおすすめします。
架台はこの望遠鏡のいちばん大きな問題点だと思います。この架台で天体観測をするのは相当のストレスを抱えることになると思います。
付属品についての見方
付属品は三脚以外にもいろいろついています。気になることもあるので触れておきます。
光学ファインダー
光学ファインダーが付属しています。倍率と口径が不明なのではっきりしたことは言えませんがあまり使うことはないと思います。
20倍にすれば目視できる天体(月、木星、土星など)はファインダーを使わなくても導入できます。
天頂ミラー
天頂ミラーは45度が付属しています。高度が高くなると45度では姿勢が保てなくなるのですが天体観測では必須のパーツになります。
高度に制限はありますが装着することによって観測姿勢が保てます。
天体望遠鏡というのであれば90度の天頂ミラーが欲しいところです
スマートフォン用アダプター
スマホで天体を撮影するためのアダプターです。
接眼レンズに見えている天体を直接撮影するやり方でコリメート撮影という方法になります。
理屈では撮影できるのですが微調整が大変です。それでも頑張れば月のクレーターは写せると思います。
ムーングラス
月を観測するときに使います。接眼レンズに取り付けるサングラスのようなものです。
月はかなり明るいため望遠鏡で見ているとまぶしくて詳細が潰れることもあるので便利です。
70ミリの口径で半月を見ているとかなり目が疲れるものです。
太陽観測用フィルター
ちょっと首をかしげたくなる付属品です。かなり危険に思いますがどうでしょう。
太陽は一瞬でもみると失明します。断言できます。絶対に望遠鏡で太陽を見るようなことはしないようにしてください。
太陽観測用のフィルターと謳っていますが使用することはお勧めできません。
とにかく太陽を直接望遠鏡で見ることは絶対にやめましょう!
昔は望遠鏡の口径を3センチくらいに絞ってそこにサングラスという黒いガラスフィルターをつけて観測していましたが危険なので現在ではそれもなくなりました。
初心者の考える天体観測とはなんだろう
やはり月の表面にあるクレーターを見たいとか土星の環を見たいになるのではないでしょうか。
それ以外にも木星や火星も表面に模様があるので一度は見たいと考えている方もいると思います。
これらの観測はあまり低い倍率では満足する見え方にはなりません。最低でも50倍以上は必要でしょう。
この視点で考えるとおすすめできる望遠鏡とはいえません。
この望遠鏡で観測すべき天体はDSO(銀河、星雲、星団)
バローレンズをつけることで高倍率を出せるようにしていますが貧弱な架台ではまともな観測はできません。
無理やり高倍率を持たせていますが実際に観測できる倍率は20倍でしょう。または33倍です。
観測対象としては月や惑星ではなくDSO(銀河、星雲、星団)のほうが向いています。
色収差についてもさほど神経質になることのない天体です。
口径が大きいのでそれなりにDSO(銀河、星雲、星団)は楽しめます
いちおう架台があるので天の川あたりをゆっくりと流しながら散光星雲や球状星団を捜すのは楽しいと思います。
低倍率では振動の影響も比較的少ないし日周運動も忍耐の範囲になります。
正直なところDSO(銀河、星雲、星団)の観測はかなり技術と忍耐が必要なので初心者のかたにはおすすめできません。
あくまでもこの望遠鏡の有効な使い道についての話です。
月面や土星の環が見たいかたはこちらの望遠鏡をおすすめします。