天体望遠鏡のしくみ【構造と性能解説】

天体望遠鏡のしくみ【構造と性能解説】

現在、市販されている望遠鏡の種類と、そのしくみ(構造)と性能について私見を交えた解説記事です。

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【屈折式と反射式の構造】望遠鏡の種類について説明

一般的にメーカーから販売されている天体望遠鏡について説明です。購入を検討するときの参考にしてください。

市場で販売されている望遠鏡には何種類かありますが光学的な種類は大別して2種類になります。屈折式と反射式のどちらかです。

望遠鏡の上限倍率について

望遠鏡の倍率は口径をミリにして2倍が上限倍率になります。13センチだと130ミリなので260倍が上限です。これ以上は倍率をあげても像が暗くなりボケるだけです。

※観測対象を選びますが最近は良質の望遠鏡であれば多少過剰倍率でも像が崩れることはなくなってきました。

屈折式望遠鏡の構造【レンズで光を集めます】

イラストの左側に対物レンズがあります。観測者は右にある接眼部から覗き込みます。

観測対象を顔の正面にできる構造的に誰でもが使いやすい望遠鏡です。

もっともイメージされる一般的な望遠鏡でしょう。

取り扱いも簡単でメンテナンスも難しくありません。初心者におすすめですが電子観望に影響する色収差があります。

色収差対策した屈折望遠鏡の種類【レンズ形式で異なります】

屈折望遠鏡が持つ色収差を補正するためにレンズの材質や組み合わせを変えて対策をします。基本的な考え方は屈折率の違う複数のレンズを組み合わせることで色収差を解消します。

  • アクロマート式屈折式望遠鏡:アクロマート式望遠鏡でも月のクレーターや土星の環を見て感動できます、それ以外は期待しないように。電子観望すると輝星のまわりに青ハロという色収差が派手に出ます。眼視観測だけが目的であれば値段的に最適な望遠鏡です。
  • アポクロマート式屈折式望遠鏡:色収差を高度に補正するために対物レンズの材質、組み合わせ枚数で対応します。アポクロマート式望遠鏡はお値段が高くなります。コストを無視するなら電子観望にいちばん向いてます。もちろん眼視観測にも向いてます。レンズだけでなく全体的な造りも含めて高級望遠鏡になります。

アクロマートとアポクロマートはレンズの違いです

かなりアバウトな説明ですがアクロマートで取り切れなかった色収差をアポクロマートで改善しています。メーカーの技術や製品によって補正能力に差があります。補正能力が高い物ほど高価です。

反射式望遠鏡の構造【鏡で光を集めます】

イラストのタイプはニュートン式になります。

筒先の横に飛び出している部分が接眼部です。ここから覗いて観察します。右下の後方に反射鏡があります。

接眼部の上についている小さな望遠鏡はガイド用のファインダーです。

構造的に反射式は操作に慣れる必要があります。

電子観望向けとして当サイトのおすすめ望遠鏡です

横から覗いて観測するなど操作に癖がありメンテも必要です。しかし色収差がなく電子観望に向いています。口径が大きくなっても価格がやすくコスパの優れた望遠鏡です。

主鏡は初心者向けに球面鏡を採用した望遠鏡もありますが、現在ではほとんど放物面鏡になりました。かならず放物面鏡を選びましょう。

反射望遠鏡の種類【反射構造の違い】仕組みが違います

市販されている反射望遠鏡の代表的なタイプを紹介します。掲載している光路図はWikipediaから引用しています。

ニュートン式反射望遠鏡【天体を横から見て観測します】

主鏡の反射光を前方の斜鏡(平面鏡)で側面にとりだす形式の望遠鏡です。ニュートン式反射望遠鏡はコスパで初心者に一押しです。不評のメンテも意外と大したことないです。電子観望、眼視観測ともに使えます。取り扱いにすこし慣れが必要です。

大口径を安価に手にできます。

カセグレイン式望遠鏡【天体を顔の正面にして観測できます】

主鏡の光軸上前方に置いた副鏡(双曲面の凸面鏡)からの光束を主鏡にあけた開口部から取り出す形式の望遠鏡です。派生した光学系が多く、クラシカル・カセグレン光学系と呼ぶこともある。

全長が短く取り回しに優れています。光軸調整もニュートン式より少ない構造です。長焦点なので高倍率が得意な望遠鏡です。惑星観測に向いています。

マクストフカセグレイン式反射望遠鏡【天体を顔の正面にして観測できます】

カセグレイン式の派生タイプです。前方に補正レンズがあります。マクストフカセグレイン式は月・惑星が得意な望遠鏡です。電子観望でDSO(銀河、星雲、星団)を狙うのは無理があります。惑星に関しては眼視はもちろん天体写真でも利用されています。補正レンズが鏡筒を密閉しているためホコリが入りません。扱い安さは屈折式に匹敵します。正式には反射式と屈折式の複合望遠鏡【反射屈折望遠鏡】になります。

前面を補正板が覆っているので外気が密閉構造になっています。主鏡の汚れが少なく光軸も狂いにくい構造でメンテンナンスがほぼ不要です。

全長も短く取り回しに優れています。長焦点なので高倍率が出しやすく惑星(土星、木星、火星)の眼視観測、天体写真どちらにも強みを発揮します。

外見に違和感があるかもしれませんが口径の割に短く軽い扱いやすい望遠鏡です。

月や惑星観測をするのであれば色収差もなく非常に良い望遠鏡です。

補正レンズとは周辺部の星像のゆがみを修正するレンズです。中心部だけでなく視野全体の良像範囲を拡大してくれます。

眼視観測でDSO(銀河、星雲、星団)は無理!【天体写真とは違うよ!】

眼視観測でDSO(銀河、星雲、星団)を狙ってもオリオン星雲以外で感動できる方は少ないと思います。

DSO(銀河、星雲、星団)は、どのタイプの望遠鏡を使っても、「とりあえず見えてるな」程度だと思ってください!そのくらいにしか見えません。天体写真とは別物です。

望遠鏡で宇宙の神秘を体験することは可能ですが、眼視観測にこだわっているとすぐに限界が来ます。なにを見ても同じような光のシミが滲んで見えるだけです。

DSO(銀河、星雲、星団)が見えないわけではありません。土星や月のようにはっきり見えるものではないということです。天体写真とくらべるとショックをうけるぐらいショボい見え方です!

DSO(銀河、星雲、星団)に興味のある方は電子観望しましょう!

電子観望に足を伸ばすと限界などなくなります!見て感動できる天体の数と感動のレベルが爆発します!

望遠鏡を購入するなら長く有効に使いこなすことを考えてください。初めて天体観測に取り組む方、天体観測初心者の方は電子観望を検討しないと、もったいないですよ。意外と簡単だし気軽にできる観測方法です。

DSO(銀河、星雲、星団)の電子観望はアポクロマート屈折かニュートン反射ですね!

F10以上のF値が長い望遠鏡はDSO(銀河、星雲、星団)の電子観望に向きません。

屈折望遠鏡は初心者やアウトドアにおすすめ!

  • 観測しやすい(すぐ観測できて目標もとらえやすい)
  • メンテナンスの必要が少ない(光軸調整の必要がない)

レンズが前についている世間一般で望遠鏡といえば誰もがイメージする形式です。目標を正面にして望遠鏡を覗きます。直感的に操作することができるうえに面倒な光軸調整が不要です。

手軽さが稼働率を向上してくれます

さらにレンズにカビでもはやすことがなければ、かなりノーメンテで使用していくことができます。子供の天体望遠鏡であれば間違いなく屈折式をおすすめします。

初心者が眼視観測するのなら屈折式をおすすめします

アウトドアや車中泊に持っていきパッと設置してサッと観測するには最適です。初心者向けの眼視観測用の望遠鏡を考えると実績と評判からラプトル60がおすすめです。ラプトルはアクロマート式の屈折望遠鏡になります。

光学性能も高くシンプルで使いやすい構造なので、はじめて望遠鏡を使うかたでも戸惑うことは少ないと思います。


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しかし土星の環と月のクレーターだけならいいのですが電子観望で使うにはアポクロマートが必要です。アクロマートの色収差は眼視観測であれば我慢できても電子観望では問題でしょう。

カメラをとおして天体を見ると眼視では気にならなかった青い色収差がかなりでます。

電子観望の望遠鏡としてはアポクロマートにすべきだと思います。金額面をクリアできるのであればベストです。

電子観望するならアポクロマートです

コスパは悪くなりますが、操作性を考えると最適の選択だと思います。実際に、このところ上級者の天体写真用とでもいったアポクロマートの新製品が続々と発売されています。

口径10センチまでのようですが手軽に扱えるサイズでありながら高性能な望遠鏡です。もちろん電子観望でも使用できます。ちょっと高価ですが本格的に電子観望や天体写真をするならありだと思います。

問題は価格で10センチで20万超えです。鏡筒だけの値段です。

電子観望するならアポクロマートにしましょう。そのときは天体写真を想定した機材をそろえたほうがよいと思います。

反射望遠鏡は安くて高性能!電子観望に最適

  • 低いコストで大きな口径
  • 色収差は無い

反射望遠鏡のなかでもニュートン式についての説明です。初心者には向かないと言われているようですが大人であれば問題なく使えます。むしろ性能を限界まで引き出す楽しみのある望遠鏡です。

色収差がない反射望遠鏡【天文台の大型望遠鏡は反射式です】

鏡で光を集める望遠鏡です。色収差はありません!これが一番のメリットです!アポクロマートでも厳密には色収差は残っています。反射望遠鏡には色収差はありません。

覗き込むところが鏡筒の横になるので操作には慣れが必要です。

横から覗いて天体を導入するのは難しそうですが自動導入があると問題ありません。むしろ高度が高くなる天体を観測するには横から見るほうが姿勢が楽になります。

さらに光軸調整という作業がついてきます。そして反射鏡はレンズにくらべて劣化しやすく10年程度つかえば再メッキが必要となります。

それでも反射望遠鏡はコスパが抜群です。特に初心者向けは複雑な光軸調整が最低限ですむように造られています。

やっかいと言われている光軸調整ですが、30センチで焦点距離が1500ミリのニュートン反射でも慣れれば光軸調整に10分かかりません。(実際のところ5分とかかりません)

光軸調整が決まると気持ちの良い像を見せてくれます。むしろ楽しい作業と思ってください。

反射望遠鏡の問題点
  1. 目標天体を顔の正面にできない【自動導入が解決します】
  2. 光軸調整が必要である【レーザーコリメーターで5分】
  3. 反射鏡の管理と再メッキが必要【10年は大丈夫】
  4. 斜鏡が見え味を落とす【大口径が迫力の星像を提供してくれます】

電子観望で銀河の渦巻き見るなら大口径!

大口径を求めるなら反射望遠鏡!

大口径で十分な光学性能を発揮してくれます。大きな口径と比較的短焦点を安価に手に入れることができる望遠鏡はニュートン式反射望遠鏡だけです。

大口径と短焦点から得られる天体の迫力はメンテナンスの煩わしさを忘れさせてくれます。素晴らしい天体を自分の目でリアルタイムで見ることができるのが電子観望です。

望遠鏡は口径が大きくなればなるほど、PC画面に天体の驚くような形状と詳細な構造を見せてくれます。

大口径は正義です!

遠くの暗い銀河を少しでも大きく見たいと思うのであれば反射望遠鏡がいちばんおすすめです。手のかかるヤツですがそこがいいのです。めんどくさいを楽しみましょう。

反射望遠鏡の光軸調整←の記事はこちらです。

口径は大きくなればなるほど弱い光を捉えることができて細かい部分も見えてきます。口径の大きさが上限倍率と分解能を決定します。

望遠鏡の光学形式と口径の価格比較

搭載重量が5キロのAZgti経緯台で使える望遠鏡での比較です。鏡筒のみでの比較になってます。ニュートン反射の光学性能に対する価格面での優位性は明らかです。

メーカー口径焦点距離F値価格(税込み)
アクロマート屈折ケンコー10センチ500ミリ560500円
アポクロマート屈折スカイウォッチャー8センチ600ミリ7.5115500円
セミアポクロマート屈折SVボニー10センチ700ミリ778192円
ニュートン反射スカイウォッチャー13センチ650ミリ534800円

販売されている代表的な望遠鏡の種類

現在販売されている代表的な望遠鏡の種類を一覧にしてみました。機種の選択は個人的なセンスです。他意はありません。

電子観望や天体写真専用の望遠鏡は選んでいません。眼視観測にも使える望遠鏡です。

屈折式望遠鏡【鏡筒のみとセット品が混ざっています】

どの望遠鏡も土星の環くらいは楽勝で見えます。

メーカー光学形式型式口径(F値)焦点距離
スコープテックアクロマートラプトル6060ミリ(11.7)700ミリセット品
スコープテックアクロマートアトラス8080ミリ(12.5)1000ミリセット品
ケンコートキナーアクロマートSE-AZ5102ミリ(5)500ミリセット品
ビクセンアクロマートポルタⅡA80Mf80ミリ(11.4)910ミリセット品
ビクセンアポクロマートED80Sf80ミリ(7.1)570ミリ鏡筒のみ
タカハシアポクロマートFSQ85EDP85ミリ(5.3)450ミリ鏡筒のみ
タカハシアポクロマートFC-100DC100ミリ(7.4)740ミリ鏡筒のみ
スカイウォッチャーアポクロマートEVOSTAR80ED80ミリ(7.5)600ミリ鏡筒のみ
SVボニーアポクロマートSV550ED8080ミリ(6)480ミリ鏡筒のみ
SvボニーセミアポクロマートSV503 102ED102ミリ(7)714ミリ鏡筒のみ

反射望遠鏡【鏡筒のみとセット品が混ざっています】

どの望遠鏡も土星の環くらいは楽勝で見えます。

メーカー光学形式型式口径(F値)焦点距離
スカイウォッチャーニュートンBKP130
+ AZ-Go2
130ミリ(5)650ミリセット品
スカイウォッチャーマクストフ
カセグレイン
MAK127
+ AZ-Go2
127ミリ(11.8)1500ミリセット品
スカイウォッチャーニュートン130PDS130ミリ(5)650ミリ鏡筒のみ
スカイウォッチャーマクストフ
カセグレイン
SKYMAX127127ミリ(11.8)1500ミリ鏡筒のみ
笠井トレーディングニュートンGINJI150FN150ミリ(4)600ミリ鏡筒のみ
笠井トレーディングクラシカル
カセグレイン
GS114CC114ミリ(12)1368ミリ鏡筒のみ

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